肥満を予防する地中海料理はダイエット食?:正しい脂質の摂り方とは

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

単純脂質:中性脂肪、ロウ
複合脂質:リン脂質、糖脂質、リポタンパク質
誘導脂質:ステロール類

脂質と一口にいっても様々な種類があります。

ダイエットにおいての脂質(=脂肪)とは、中性脂肪(英語でTriglyceride トリグリセリド)のこと。

この中性脂肪はグリセリンと脂肪酸が結合して構成されます。

多くの種類の脂肪酸があり、どんな脂肪酸が含まれているのかによって、その脂質の性質も変わってきます。

大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のふたつ。

飽和脂肪酸は、一般に固形で乳製品や肉などの動物性脂肪に多く含まれており、ひとの体内で作ることが可能です。

植物や魚の脂に多く含まれるものを不飽和脂肪酸といい、体内で作ることができないものも含まれます。

このうち飽和脂肪酸の過剰摂取がわたしたちの健康を大きく損なう元凶であることをご存知でしょうか?

具体的には肥満、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患になりやすいのです。

今回はこの飽和脂肪酸から話を展開し、次回の不飽和脂肪酸の話題につなげます。

飽和脂肪酸の摂りすぎは危険

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18歳以上の男女の飽和脂肪酸摂取の目標量を、総摂取エネルギーの7%相当以下としています。

脂質は1gあたり9kcalですので、1日の摂取必要量が2000kcalの摂取するひとでは1日の飽和脂肪酸量を16g以下にする必要があります。

では日頃私たちが口にする食材には、どれほどの飽和脂肪酸が含まれているのでしょうか?

以下に食品100g当たりに含まれる飽和脂肪酸量を示します。

牛肉 サーロイン  11g
うし リブロース  9g
ぶた バラ      13g
ぶた カタロース   7g
鶏  もも     3.8g
鶏  むね     1.5g
ウインナー   10g
ハム(ロース)    5g
さんま   4.2g
さば   3.3g
きはだまぐろ   0.1g
大豆   2.6g
卵   2.8g
牛乳   2.3g
即席カップめん   8.3g

いかがでしょう?

当然200g食べればこの2倍になります。

日常的に牛肉・豚肉やカップ麺を食べているひとは、すぐに目標摂取量を超えてしまいます。

例えば、和食中心の食事:Aと、洋食中心の食事:Bの飽和脂肪酸量を比較してみましょう。

食事A(飽和脂肪酸量)
朝食:納豆1パックg、サバ水煮1/2、白米、味噌汁 (3g)
昼食:鮭おにぎり2個 (1g)
夕食:サンマ大190g、豆腐1/2、おひたし、味噌汁、白米 (5g)

食事B(飽和脂肪酸量)
朝食:ウインナーソーセージ 3本、牛乳1本 菓子パン(15g)
昼食:ハンバーガー1個またはカップ麺1個 (8g)
夕食:牛肉100g、コーンスープ、サラダ、白米 (12g)

食事Aの一日飽和脂肪酸摂取量 9g に対して、食事Bは 35g になります。

魚、野菜、大豆が中心の日本食は、動脈硬化を起こしにくい脂肪酸組成をもつ理想的な食事といってよいでしょう。

一方、洋食中心のBは飽和脂肪酸摂取基準の2倍超。

欧米人に心筋梗塞などの動脈硬化性疾患が多いことに合点がいきます。

しかし日本でもBのような食事をするひとは決して少なくありません。

むしろ食べる量がこの2倍であったり、間食にケーキやポテトチップをよく食べるなど、欧米人のような食生活の人も少なくないようです。

毎日のように肉類が食卓に並ぶひと、糖質を避ければ肉は制限する必要はないとする糖質制限ダイエットを実践するひとが、不健康と考えられる理由のひとつはこの点にあるのです。

地中海料理が健康に良い理由とは?

日本食の他に理想的といわれている食事、それは地中海食です。

地中海食とは、イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国々の伝統的な料理のことで、次のような共通の特性があります。

・果物や野菜を豊富に使用

・乳製品や肉よりも魚を多く

・ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う

・使用する油の多くはオリーブオイル

・食事と一緒に適量の赤ワインを飲む

疫学研究では、地中海沿岸の国では高脂肪食を食べているにもかかわらず、血中コレステロール値が低く、狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化症が少ないことが報告されました。

高脂肪食なのに動脈硬化が少ない理由は次のとおり。

・飽和脂肪酸を多く含む肉の摂取量が少ない

・抗酸化作用が強い(=動脈硬化をお越しにくくする)野菜や果物、ワインなどの植物性の食品を多く摂取する

・オリーブオイルが不飽和脂肪酸を多く含んでいる

ちなみに地中海食(料理)は、2010年11月に世界無形文化遺産として登録されました。

2014年にはアメリカのハーバード大学の研究班やその他の調査により、地中海食を食べている人は、心血管疾患、がん、パーキンソン病、アルツハイマー病のリスクが低いこと、活習慣病の原因ともなる肥満が少ないなどの効果が明らかにされています。

そして私たちの和食も地中海食の特徴に重なる部分が多くみられます。

アメリカのNPO法人Oldwaysが作成した地中海食ピラミッドには、何をどれだけ食べたらよいか示してあります。

わたしたちの伝統食である和食にアレンジして、健康的な食事を工夫してみてはいかがでしょうか?

地中海食ピラミッド
地中海食ピラミッド

Make Every Day Mediterranean: An Oldways 4-Week Menu Plan Book(2019)を改変して作成

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