糖尿病の人が小さな飴玉をなめただけで血糖値が一気に上昇!
こんな話をよく耳にします。
一方、コレステロールの高い脂質異常症の人が、卵を食べたあとに血液検査をしたら一気にコレステロールが上昇!という話は聞いたことがありません。
なぜでしょうか?
飴玉の糖分は腸から吸収されて血液の中に入るとそのまま「血糖」になるのに対して、卵のコレステロールは吸収されて血液の中に入ってもそのまま「血中コレステロール」にはならないからです。
というのは、健康診断で高いと医者から言われた場合のコレステロールは、リポ蛋白コレステロールを意味しているからです。
リポ蛋白コレステロールとは、脂質(リポ)とたんぱく質がコレステロールに結合してできた物質のことで、俗に悪玉コレステロールと呼ばれます。
では、卵を食べても血中コレステロールは全く変化しないかというとそうでもなく、1日あたり卵1個分のコレステロール約270mgの摂取を減らすと、血中コレステロール濃度が約9mg/dl低下すると計算上は考えられています。
飴玉とはずいぶん差がありますね!
「太っていない(痩せている)のにコレステロールが高い!」
「卵を食べないのにコレステロールが高い!」
クリニックの脂質外来にはこんな患者さんがたくさん受診されます。
厚生労働省の国民健康・栄養調査等によると、ピーク時の1972年に比較してコレステロール摂取量は3割ほど減少しているにも関わらず、脂質異常症が疑われる人数はそれに見合った減少は認められません。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
答えは、血中コレステロールは食物中のコレステロール含有量だけでなく、脂質の量と種類によって大きく影響を受けるからです。
それを定量的に把握するには下図のキースの式とよばれる計算式が用いられます。
とてもわかりにくいので、要点だけ記述します。
① コレステロールと飽和脂肪酸摂取によって上昇する
② 不飽和脂肪酸摂取によって低下する
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸については、本ブログ「健康と美容に役立つ油、避けたい油」https://www.yoshino-naika.com/blog/96360/などで詳しく解説しましたので、そちらも参照していただけたら幸いです。
では、具体的にどの食品の摂取を控えると、どれだけコレステロールが下がるのかみてみましょう。
平成30年の国民健康・栄養調査では成人1日あたり平均、エネルギーは1930kcal、コレステロール340mg、飽和脂肪酸17.6gを摂取しています。
仮にこの平均値だけ摂取しているAさんが卵1こを控えると、前述のように食品のコレステロールは270mg減少し、血中コレステロール9mg/dl低下することになります。
食事コレステロール1日摂取量を340mgから70mgに減らしても、血中コレステロールは9mg/dlしか低下しない!
卵のほか、いくらなどの魚卵やうなぎ、レバーなどがコレステロールを多く含む食品の一例としてよく取り上げられます。
しかし、これらの食品を毎日のように食べれば別ですが、たまに摂取するには気にする必要はないでしょう。
キースの式からわかるようにコレステロールの含有量に関わらず、飽和脂肪酸を多く含む食品により血中脂質は上昇します。
飽和脂肪酸の多い牛肉や豚肉は摂取を60g減らせば、ほぼ卵1個分の血中コレステロールを低下させることができます。
乳製品も飽和脂肪酸を多く含み、牛乳2本、生クリーム30gで卵1個で同等の効果が得られます。
卵、牛乳、生クリームたっぷりのケーキはコレステロールが急上昇するのもナットクです。
菜種油やひまわり油などのサラダ油に含まれる不飽和脂肪酸は、コレステロールを下げる働きがあります。
ところが、不飽和脂肪酸をたくさんとればコレステロールがたくさん下がるというわけには行きません。
この場合総摂取カロリーが増えてしまい、別の面からコレステロールが上昇してしまいます。
加えて、サラダ油に多く含まれるオメガ6系脂肪酸の過剰摂取は、アレルギーや動脈硬化のもととなる炎症を引き起こすというマイナス面があります。
現代日本の食事事情では、サラダ油は摂取過多と言われていますので十分に注意が必要です。
もう一つの問題点は、スナック菓子、インスタントラーメン、冷凍食品、レトルト食品などに使われている植物性油脂は、サラダ油ではなくパーム油が多いという点です。
パーム油は植物由来の油脂であるにも関わらず、飽和脂肪酸を多く含む油であるため、血中コレステロールが上昇してしまいます。(「知らずにいると危険な油の正体ーパーム油とココナッツオイル」https://www.yoshino-naika.com/blog/97120/)
ではいったい何を食べれば安心して血中コレステロールを下げることができるのでしょうか?
身近な食品では魚です。
まぐろ、いわし、さんま、さば、さけ、ます、ぶりなどに含まれるオメガ3系脂肪酸は、コレステロールをしっかり下げてくれます。
そのほか、アマニ油、えごま油、くるみにも多く含まれていますので、魚を食べない日にはこれらの食品で補うと良いでしょう。
たかがコレステロール されどコレステロール
食生活を見直して、心筋梗塞などの動脈硬化症を予防しましょう。