「去年まで糖尿病と言われたことがなかったのに、今年から急に糖尿病になった」
「長年軽い糖尿病予備群状態が続いていたのに、今年急にインスリン注射が必要なレベルに悪化した」
健康診断後にこのように言いながら当院を受診される患者さんがあとを絶ちません。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
その原因は健康診断・人間ドックの実施方法にあります。
胸部レントゲン検査と血液の肝臓・腎臓・貧血検査は食事の影響は受けにくい検査で、食前食後のどちらに検査を実施しても構いません。
一方、胃の検査、肝臓など消化器系のCT・超音波検査、血液の脂質検査は食事の影響を受けやすく、必ず胃袋が空の状態で検査を実施します。
このため、健康診断や人間ドックは通常空腹時状態(前日夜9時以降絶食状態)に行います。
では、糖尿病を診断するためにはどちらの状態が良いのでしょうか?
ひとつの答えは空腹時と食後どちらでも良いです。
このため他の検査と同時に行いやすいよう、空腹時に血糖検査が実施されているのが現状です。
しかし実はこのため糖尿病の早期発見が遅れることもあるのです。
はじめに糖尿病の診断について確認しましょう。
糖尿病と診断するには、①空腹時血糖126mg/dl以上、②随時血糖(≒食後血糖)200mg/dl以上のうち、少なくともどちらか一方が必須です。
検診では通常①のみが測定されます。
ところが短距離走が得意な人もいれば長距離走が得意の人もいるように、空腹時血糖は正常なのに食後血糖は高い、あるいはその逆という人もいます。
このため、通常の健康診断・人間ドックでは、空腹時血糖が高いタイプの糖尿病は発見されますが、「空腹時血糖は正常、食後血糖は高い」タイプ、いわゆる「隠れ糖尿病」は見過ごされがちになります。
では、どのようにしたら発見できるでしょうか?
「隠れ糖尿病」を見過ごさないために、③75g経口ブドウ糖負荷試験 血糖2時間値≧200mg/dl という診断基準が別に用意されています。
この基準を用いると、食後高血糖をより正確に容易に検出できるようになります。
検査方法は、空腹時に75gのブドウ糖入り飲料水を飲んで2時間後の血糖値を測定するだけの簡単なものです。
この検査を行うことで糖尿病を発見する精度が格段に上昇!
下図からわかるように、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行うことで検診受診者から新たに45%の人から糖尿病を発見できるのです。
換言すれば、検診では45%の人が糖尿病を見逃されている!
実際にはこれ以外にHbA1cという検査や症状病歴も勘案して診断(最下)が行われます。
もし、健康診断・人間ドックで尿糖、血糖に異常値が検出されたら、早めに糖尿病専門医に相談すると良いでしょう。
① 空腹時血糖値≧126mg/dl
② ブドウ糖糖負荷試験 2時間血糖値≧200mg/dl
③ 随時血糖値≧200mg/dl
④ HbA1c≧6.5%
のいずれかが確認され、さらに別の日に再確認されれば糖尿病と診断。
(④HbA1cのみの反復検査による診断は不可)
あるいは一回の検査で①~③のいずれかと④が確認されれば糖尿病と診断。
ただし、血糖値が①~③のいずれかを示し、かつ次のいずれかが存在した場合も糖尿病と診断。
糖尿病の典型的症状(口渇,多飲,多尿,体重減少)
確実な糖尿病網膜症