減塩、禁煙、減量、それでもだめなら薬。
高血圧の治療はこのように理解している方が多いでしょう。
ところが、高血圧を患う10〜20人に1人は、手術で治る可能性があるのです。
その高血圧の名は、原発性アルドステロン症。
はじめてこの病気の名前を耳にする方も多いと思いますので、まずは「アルドステロンとは」からスタートします。
人は進化の過程で塩分濃度3.5%の海水の中から、塩を手に入れにくい陸で生活するようになりました。
二本足で立った状態で血圧を維持するためには、塩と水がとても大切な役割をはたします。
人の体は一度体内に取り入れた塩を簡単に尿として外へ出さず、血圧を維持する仕組みに利用して陸で生活できるようになりました。
その塩(ナトリウム)を体内に保持する仕組みの中で、大事な役割を演じているホルモンをアルドステロンと呼びます。
ところが、これが過剰に分泌されるとナトリウムが体内に留まり、加えて水分も一緒に溜まってしまいます。
その結果、血圧が高くなったりむくんだりする症状を来すようになります。
アルドステロンが分泌される場所は、腎臓のすぐ上に三角帽子のように乗っている3〜4cmほどの副腎と名付けられた臓器。
副腎皮質にしこりができアルドステロンが過剰に分泌されて高血圧になる病気を、原発性アルドステロン症(PA)と言います。
特に若いのに血圧が高い人、薬を飲んでも血圧が下がらない人はPAが疑われますので検査が必要です。
PAの最初の検査は、血中アルドステロンとレニンの測定。
アルドステロンは、体位や身体活動に敏感に分泌が変化するため、15〜30分程度の安静後に採血を行ないます。
血中アルドステロンが高値かつアルドステロン/レニン比が一定の値を超えた場合、PAを疑います。
その後CTなどの画像検査と、ホルモン負荷検査などの内分泌(ホルモン)学的検索を経て、最終的に診断が下されます。
PAは基本的にがんのような悪性疾患ではありません。
PAのなかにも様々なタイプが有り、手術をしないで治療するタイプもあります。
このタイプのPAは通常の高血圧症とは異なる種類の降圧薬が必要です。
またPA以外にも副腎にしこりができて高血圧をきたす病気が存在しますので、診断には慎重な検査が必要です。
「なんの症状もないから・・・」と高血圧を放置しては絶対にいけません。
健康診断などで高血圧を指摘された場合は、速やかに内科医・内分泌代謝科専門医を受診すると良いでしょう。