私は、糖尿病、肥満、甲状腺などの、内分泌代謝を専門とする内科医です。
いつ頃からか、特にコロナ禍以降、内科クリニックにも関わらず、うつ病など心の病を伴う患者さんが多いことに気づきました。
とりわけ肥満を主訴に受診した人の85%に、うつ病やうつ状態がみられました。
どうやら「うつ」のひとは、生活習慣に問題を抱えているようです。
国立精神・神経医療研究センターの研究によると、うつ病群ではBMI30以上の肥満の割合が1.61倍も多いという結果でした。
また食生活に関して、うつ病群では、間食・夜食をほぼ毎日食べる人の割合は、まれにしか食べない人の1.43倍と多く、朝食をほぼ毎日食べる人の割合は、朝食をまれにしか食べない人の0.65倍と少なかったのです。
運動に関してはどうでしょう。
オーストラリアの研究によると、運動をする習慣がまったくない人は、週に1〜2時間の運動をしている人に比べ、うつ病発症のリスクが44%増加しました。
当院にはじめて受診した際に、記入していただいている肥満外来問診票をあらためてみてみると、食・運動に関する上記の研究と、見事に一致した傾向でした。
以上から、みなさんもすでにおわかりのように、うつ病も糖尿病、高血圧、脂質異常症などと同様な生活習慣病の一つなのです。
興味を持てない、やる気がない、だるい、考えがまとまらない、眠れない、肩こり・頭痛・腰痛などの症状を自覚する人は多いでしょう。
これらの症状はうつ病によくみられます。
こういったひとは、うつ病とまではいかなくても、その前段階かもしれません。
病気一般にあてはまることなのですが、どこからどこまでが病気と、はっきり境界が示せるものではないのです。
うつ病であるかないかに関わらず、上記の症状に悩むひとは、まず生活習慣を見直すことが大切です。