私の肥満外来に定期受診する女性の多くは目標体重に到達することができます。
ところが、なかにはダイエットが上手くすすまない方がいます。
どうしてうまくいかないのかと考えてみると、そのような方々には共通する3つの考え方がみえてきます。
1.食欲を抑える必要はないと考えている。
そんなに食べていない、太るほど食べてはいない、水を飲んでも空気を吸っても太る体質である、代謝が低下しているからだ。
2.運動不足だから太ると考えている。
運動はきらい、膝や腰が痛くて運動できない。
3.ダイエットしても少しは体重が減るけど、希望どおりには減らないと考えている。
ここではこの3つの考え方について考察していきましょう。
1.食欲を抑える必要はないと考えている。
この考えの根底にあるのは、「私が太っているのは、食べ過ぎが原因ではなく他の人よりもかなり(基礎)代謝が低下しているのが原因である」ということのようです。
それではまず基礎代謝についておさらいしましょう。
ひとの消費エネルギーの約60%は基礎代謝が占めます。
基礎代謝は、何もせず安静にしている状態でも、体温を保ったり脳や内臓の働きを維持するために使われるエネルギーのことです。
基礎代謝は女性より男性が多く、また10代をピークに年齢を重ねるごとに減少します。
「加齢とエネルギー代謝」(厚生労働省)によると、18歳から29歳女性の基礎代謝は1180キロカロリー、30歳から49歳では1140キロカロリーと40キロカロリー低下します。
また基礎代謝は筋肉量に比例して増減します。
同じ性別・身長・体重の人を比べた場合、筋肉量が少ない方が基礎代謝量が少ない、すなわちふとりやすいといえます。
一方、筋肉(骨格筋)は、筋トレなどを行って自分で増やすことができます。
筋肉量を増やせば消費されるエネルギー量(基礎代謝)が増えるため、痩せやすく太りにくい体質へと変化していきます。
それに加えて、基礎代謝は甲状腺の状態によっても増減します。
甲状腺のはたらき(機能)が亢進すると基礎代謝は増加し、低下すると減少します。
基礎代謝が低下する病気のひとつに、橋本病、ヨード過剰摂取などによる甲状腺機能低下症があります。
甲状腺機能低下症になると、体重増加のほか、むくみ、便秘、脱毛、疲れやすいなどの症状を伴うこともあります。
甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモン剤(飲み薬)を補充することで改善しますので、肥満などの症状に悩むひとは、甲状腺の働きを調べる必要があります。
甲状腺の機能は血液検査で調べることができますので、内分泌内科に受診すると良いでしょう。
ここまでの基礎代謝についてまとめます。
① 年齢と性別により基礎代謝に差がある・・・変えることはできない。
② 筋肉量により基礎代謝に差がある・・・努力によって変えることができる、努力しなければ変わらない。
③ 甲状腺機能により基礎代謝に差がある・・・異常があれば医療機関受診により改善できる、異常がなければ変わらない。