狩猟採集社会の1日労働時間は4時間!
狩猟採集民は生き延びるために絶え間なく働く苛酷な生活、というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか?
人類学者のマーシャル・サーリンズはその著書「石器時代の経済学」で、狩猟採集民の労働時間が短いだけでなく、その社会が豊かさにあふれたものであることを世に紹介しました。
それでは現代の日本は?
石器時代の2倍、中には3倍、4倍と働いている人もいるのではないでしょうか?
仕事の効率化が求められて生活は時間に追われ、まさしく「時は金なり」と言わんばかり。
移動の高速化、IT利用による効率化がなされてもさらなる効率化を求められ、朝食抜き、朝食を取りながら通勤、仕事しながら昼食、早食い、早食いしやすい一品物をかじりながらの仕事・・・
食事時間を短縮してまで時間を捻出。
それでもなお時間が足りなくて、仕事を長時間化し、本来休息の時間帯に仕事が入り込むまでになっているのです。
そのうえ、シフト勤務で夜間に働いたり、夜間にスマホ、インターネット、ゲームなどを利用して睡眠時間が短くなっている人も増えてきています。
このような睡眠不足はわれわれにいったいどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
米国名門総合病院のMayo Clinicは、十分な睡眠をとれない(4時間)グループは、睡眠を十分(9時間)とったグループに比べて、1日あたり308kcal多くの食事を摂取するようになり、CTで測定した内臓脂肪面積は3週間で7.8平方cm増加したという研究成果を今年発表しました。
まさに睡眠不足はメタボリックシンドロームの元凶です。
睡眠と覚醒は、体内時計によって約1日のリズムに調節されており、この約1日の周期をもつリズムのことを概日リズムと呼んでいます。
ひとの体内時計の周期は約25時間ですが、地球の1日の周期は24時間であり、体内時計とは約1時間のずれがあります。
日常生活で刺激を受けることにより、体内時計が外界の周期に同調して約1時間のずれが修正されます。
その刺激を同調因子と呼び、それが日光、食事、運動なのです。
この体内時計の周期と地球の24時間の周期との間のずれを修正することができない状態が続くと、睡眠障害をきたします。
つまり食事は栄養補給だけが目的でなく、概日リズムの同調因子という睡眠にとって重要な役割を担っているのです。
肥満やメタボリックシンドロームの予防・治療は、十分な睡眠、規則正しい就寝・起床・3度の食事無くしてありえないということがおわかりでしょう。
さて、今日も私は診察室で、忙しくて睡眠不足で朝食もとれず、ストレスで過食に走る肥満の患者さんとこんな会話を交わします。
「先生、体重を減らすためには、何をしたら良いですか?」
「良い質問ですね。それでは何かはじめる前に、まず何かひとつやめましょう」
「・・・?」
ポジティブ心理学の研究者タン・ベル・シャハーは著書「ハーバードの人生を変える授業」において、こんなことを言っています。
「私たちはたくさんの活動を日々の生活に押し込むことによって、忙しくなりすぎています。」
「どの部分を簡素化できるか」
「何をやめられるか」
「インターネットやテレビを見るのに時間を使いすぎてはいないか」
「仕事の会議の回数や時間を減らすことはできないか」
「断れることを引き受けていないか」
「生活の中のビジネス(business)=忙しすぎ(busyness)を減らしましょう」
こうして捻出した時間を十分な睡眠、規則正しい就寝・起床・3度の食事に使って、内臓脂肪を減らしませんか?
シンプルに!
シンプルに!
シンプルに!
することを2つか3つに絞るのです。
百や千では多すぎます。
百万ではなく、半ダースで十分です。
ー 作家 ヘンリー・D・ソロー