「過ぎたるは猶及ばざるが如し」何事でもやりすぎることはやり足りないことと同じようによくない。
日本のことわざには他にもいくつか類語があります。
「念の過ぐるは無念」程度が過ぎるとかえって足りないのと同様によくない。
「分別過ぐれば愚に返る」あまり深く考え過ぎると、かえって失敗する。
次も類語でしょうか。
「薬も過ぎれば毒になる」
以前私が病院勤務医時代に、救急外来でこんな事を経験しました。
高齢女性の心肺停止患者を蘇生していたときのことです。
胃袋から大量のしょう油が吸引されました。
後にご家族に伺ったところ、女性は認知症を患い、しょう油の入っていた空の1升瓶とともに倒れていたところを発見されたことがわかりました。
しょう油過飲による高ナトリウム血症が死因と推定されました。
毎日口にしているしょう油でもこんなことが起きうるのです。
「腹も身のうち」
健康のため暴飲暴食を戒めることわざです。
わたしたちがつい食べすぎ飲みすぎてしまう事が多いからなのですが、なぜそうしてしまうのでしょうか?
「人類は誕生以後飢えに苦しみ続けた。いつ食べ物にありつけるかも定かでない飢餓の中、手に入れた食料はすべて食べ尽くし、余剰な摂取エネルギーをすべて中性脂肪として蓄える大食漢だけが生きながらえる時代が30万年続いていたのです。」やってはいけないダイエット法ー「減量病」より
このように「大食い」は生き延びるための術でした。
誰もが一度や二度「えいっ、もう食べちゃえ」とばかりに、吐きそうになるくらいやけ食いやむちゃ食いをした経験はあると思います。
ところが、空腹感があるなしにかかわらずすごい勢いで大量に食べ、食べることを自分でやめることができないことが繰り返されれば、これは「病的な」むちゃ食いであり、過食性障害というひとつの病気として2013年より位置づけられています。
早く食べる
吐きそうになるまで食べる
空腹を感じていなくても食べる
摂食衝動を抑制できない
食べている間は気が楽になる
この行動に恥ずかしさ、嫌悪感、罪責感を感じる
これらが過食性障害の特徴です。
自信のなさや社会との関わりが不得手なことなどがその背景にあると考えられています。
「敵を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」
『孫子』の中でも最も有名な教訓の一つです。
孫子は、戦いの際には、敵情を知ることと客観的に自分を知ることが大切であることを説いています。
どんな病気についてもあてはまることですが、戦い(肥満を治す=減量する)の際には、敵(肥満症の特徴)を知り、己(自分の食行動や考え方のくせ)を知ることが治療のための一丁目一番地なのです。