血糖値を降下させるホルモンは膵臓のβ細胞から分泌されインスリンとよばれます。
インスリンの働きで、血液中のブドウ糖(血糖)をエネルギー源として肝臓・筋肉などに取り込むことができるようになります。
では、インスリンのもうひとつの働きをご存知でしょうか?
それは脂肪の合成と貯蔵を促進し、からだの脂肪分解を抑制する作用です。
つまり、皮下脂肪や内臓脂肪を増やすのです。
この働きから考えると、膵臓から分泌されるインスリン量は血糖を正常に保つために必要最小限であれば、体脂肪の増加を抑制することがわかります。
「体脂肪はふやしたくないけど、インスリン分泌なんて自分の力ではなんともならない!」
こんな声が聞こえてきます。
でもなんとかなる方法があるのです。
車のタイヤ空気圧が低下したり、エンジンオイルが劣化したら・・・
ガソリン1リットル当たりの走行距離(燃費)が低下しますね。
空気を入れ、オイル交換したら走行距離は伸びます。
これと同様に、運動不足(タイヤ空気圧低下・オイル劣化)はインスリン1単位当たりの血糖降下作用(クルマの燃費)を低下させます。
これはインスリン抵抗性とよばれ、糖尿病の病態のひとつです。
車の燃費をよくするのがタイヤの空気やオイル交換なら、インスリンの効きをよくするのが運動なのです。
ウォーキングなどの有酸素運動を行うと、その時点の血糖を下げるだけでなく、インスリンの効きを改善する(インスリン節約)効果が24時間以上持続します。
2日に1回、30から60分の有酸素運動を行えば体脂肪は徐々に減って減量が可能です。
それでは運動以外にインスリン分泌を節約する方法はないのでしょうか?
「肥満予防にひみこのはがいーぜ」でお話したように、狩猟採集時代の食事の中心は木の実やイモの他、クリ、クルミ、ドングリなどの食物繊維の多い堅果類でした。
堅果類はGI値が低い食物です。
GIとは食後血糖値の上昇を示す指標、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略です。
GIが高い食品は、血糖値を急上昇させるため、血液中の糖を処理するために多量のインスリンが分泌されます。
逆にGIが低い食品では、血糖値の上昇もゆるやかになるため、インスリンも分泌しすぎることなく、糖はすみやかに吸収されていきます。
ひとにとって欠かせない栄養素である炭水化物をゆるやかに吸収することは、急激な血糖値の上昇をおさえて肥満を防いでくれるのです。
現代の日本の主食はGI値が高い食品で満ち溢れています。
砂糖、白米、小麦(パンや麺類)などいずれも精製されているからです。
例えば、「茶色い炭水化物」を食べてダイエット!でご紹介した玄米をみてみましょう。
白米のGI値は88であるのに対して、精白されていない玄米は55と低GI食品です。
高GI値=高エネルギーという意味ではありません。
同じカロリーを摂取するなら低GI値の玄米の方が、インスリン分泌を節約できて太りにくいのです。
とはいうものの、毎日の食事すべてで玄米や全粒粉で作ったパン、うどん、ラーメン、パスタを食べることは容易にできることではありません。
それではどうしたら良いのでしょうか?
このブログをはじめから読んでいただいている皆さんにはもうおわかりのことと思います。
そうです、食べる順番ダイエット!
はじめに野菜をよくかんで食べすすめていていけば食物繊維のおかげで、炭水化物がゆるやかに吸収されるので、インスリン分泌が節約されて太りにくくなるのです。
この考え方は「時間栄養学」に由来するもののひとつで、近年注目を浴びている分野です。
後日詳しくお話します。