夕食が遅い、食べてまもなく寝る、睡眠が少ない、熟睡できない、運動嫌い、間食が多い。
肥満外来を訪れる多くの患者さんは、このうちのどれかひとつ以上がみられます。
このような生活習慣がなぜ肥満と結びつくのか?
それは分泌される成長ホルモンが少ないからです。
大人も成長ホルモンが出てるの?
こんな疑問をお持ちの方も多いでしょう。
もちろん出ています。
脳の下垂体と呼ばれるところから、生後から多く分泌され思春期にピークを迎えます。
その後は徐々に減少するものの、生涯にわたって分泌され続けます。
大人になってもう成長しないのに、なぜ成長ホルモンが必要なのでしょうか?
ひとのからだの骨、筋肉、皮膚は絶えず新陳代謝を繰り返しています。
成長ホルモンはこの代謝に働き、骨、筋肉、皮膚に作用して組織の修復を行い、疲労回復や免疫作用にも関わっているのです。
では、成長ホルモンは1日のうちでいつ分泌されるのでしょうか?
「寝る子は育つ」のことわざからもわかるように、眠っている間を中心に一日中間欠的に分泌されています。
このため、睡眠不足になるとホルモン量が少なくなってしまいます。
寝不足の朝、お肌の調子が良くないことを経験したことはありませんか?
寝不足からホルモン不足のために、皮膚の組織修復が十分になされなかったことが原因のひとつです。
成長ホルモンにはもうひとつ「脂肪を分解して血糖を上昇させる」という重要な働きがあります。
夕食が遅い人、食べてすぐ寝る人は食後の血糖が高い状態のまま寝ることになります。
すると脳は「血糖を上昇させる必要はない」と判断して、成長ホルモンを分泌させません。
睡眠不足の人は、成長ホルモンの脂肪分解作用を受けることが少ないため、脂肪がたまりやすいのです。
間食が多い人、食事時間が決まっていない、ダラダラ食いの人も常時血糖が上昇していて、成長ホルモンの分泌は抑制されてしまいます。
そして成長ホルモンは運動することでも分泌されます。
運動不足で肥満になる理由は、単に消費エネルギーが少ないからだけでなく、成長ホルモンが少ないことにも関係しているのです。