小学校の頃は、学校から帰るとランドセルだけ家においてすぐに遊びに出かけていました。
縄跳び、缶けり、ドッジボール、ソフトボール・・・
時間を忘れて遊びに夢中になっていましたが、不思議と夏でも冬でも決まった時刻に家へ帰っていたものです。
当時子どもたちは誰も時計を持っていませんでしたが、家に帰る時刻は腹時計が教えてくれたのです。
それから50年が経って・・・
本当に腹時計が存在することを知りました。
2017年、ノーベル生理学・医学賞は、3人の米国人科学者に授与されました。
生物の体内で時を刻む「体内時計」に指示を出す遺伝子を特定した功績が認められたのです。
体内時計は私たちヒトだけでなく、動物、植物、細菌に存在することが知られています。
ねずみやコウモリは夜えさを食べる、ニワトリは朝コケコッコーとなく、アサガオは朝花開く、オジギソウは夜間葉を閉じ垂れ下がる・・・
ではなぜ体内時計が生物に存在するのでしょうか?
証明することはできないのですが、食糧や栄養素を効率的に見つけたり作り出したりできるように、天敵・捕食者から逃れて生き延びることができるように、などの理由が考えられています。
ところが現代社会の多くの国では、24時間、365日食糧をいつでも手に入れることができ、いつでも冷蔵庫から取り出して食べることができるようになりました。
そして昼間だけでなく、24時間、365日いつでもどこでも活動できる世の中へと変貌しました。
もう腹時計、いや体内時計に従う必要はなくなってしまい、それぞれの生活パターンに合わせて生活しています。
一方、私たちの一つ一つの細胞は生活リズムとは別に、刻々と時を刻みそれに従って生命活動を営んでいるのです。
このように、体内時計とは異なる生活をおくる現代社会人のからだには、何か異変は起きないでしょうか?
人の体内時計は24時間ではなく、24.2から24.5時間(概日リズム、サーカディアンリズム)といわれています。
個人差、年齢、生活習慣によってばらつきますので、およそ24±1時間と考えて良いでしょう。
このように体内時計はぴったり24時間ではないため、地球の自転に合わせるため毎日時刻合わせをする必要があります。
1日15分後ろにずれるひとは、4日で1時間、1ヶ月半で12時間ずれてしまいます。
これでは昼と夜がひっくり返ってしまいますので、体内時計は外界からの情報を取り入れて、日々時計合わせ(リセット、同調)をしています。
時刻合わせの情報(同調因子)としてもっとも重要なのは太陽光です。
光が目に入るとその情報が、脳の視交叉上核とよばれるところに伝達され時刻を修正してくれます。
この視交叉上核は「中枢時計」と名付けられています。
中枢時計は、いつ起きるのか、いつ寝るのかという生活リズムを制御していて、光のリズムに反応します。
一方、首から下の身体、つまり肝臓、腎臓、心臓、消化管などにもそれぞれ固有の時計(末梢時計)が備え付けられています。
末梢時計には光情報は届きませんので、別の方法で時刻合わせをしなければなりません。
その方法が朝食なのです。
朝食すなわち起床後の栄養、エネルギー摂取が朝日と同じ同調因子の働きをしています。
朝食をとると内臓は活動モードに入り、それぞれの細胞は多くのエネルギーを消費するようになります。
ところが、起床1-2時間以内に朝食を取らないと時計がリセットされないため代謝は亢進せず、からだはエネルギーため込み(エネルギー節約)モード、つまり太りやすい代謝のまま一日を過ごすことになります。
ぜひ朝ごはんを食べて1日の活動を開始しましょう!