アンチエイジングには腹八分目!

女性87.71歳 

男性81.56歳

2020年の日本人平均寿命は過去最高を記録しました。

このように寿命がのびた大きな理由の一つは、乳幼児の死亡率が低下したからだと言われています。

その主な要因は、栄養状態が良くなったことと公衆衛生の改善があげられます。

では、人の最大寿命は何歳でしょうか?

それは115歳くらいが限界であろうと言われています。

でも誰もがそれだけ生きられるわけではないのはいうまでもないでしょう。

ヒトには約37兆個もの細胞があり分裂を繰り返しています。

すると遺伝子に変異が起きることがあり、やがてがん化します。

そのうちひつでもがん細胞が生き残って増殖を続けるとその個体は死んでしまいます。

これを避けるために免疫機構が働きますが、55歳位を境に遺伝子の傷が蓄積し始めます。

なんとしてもこの傷を減らしたい!

こんな思いを多くの人が抱いてアンチエイジングの研究が盛んに行われ、たくさんの寿命に関する遺伝子が発見されました。

そのひとつはGPR1という糖の代謝にかかわる遺伝子です。

これは糖感知器として、細胞のまわりにある糖を有効利用するための遺伝子です。

この感知器が働かなくなると、栄養をうまく利用できなくなります。

その結果細胞の生育が遅れサイズも小さくなりますが、一方寿命は長くなります。

これは「食餌制限効果」または「カロリー制限効果」と呼ばれ、栄養摂取量が少し減ると寿命が延びる現象をあらわしています。

多くの生物でこの現象が確認されており、酵母の実験では餌に含まれる糖分の割合を25%に減らすと、寿命が30%も延びるという結果でした。

サルでも同様の実験が行われました。

餌のカロリーを70%とした制限食群と通常食群の2グループに分けて飼育すると、通常食群では制限食群に比べ病気や死亡のリスクが約3倍上昇したという結果でした。

つまり、カロリー制限には老化を遅らせ寿命を延長する効果が期待できるということです。

食餌を減らすと寿命が延びる原因は、発生する活性酸素の低下と考えられています。

生物は栄養素を燃やすことでエネルギーを得て生命活動に利用しています。

このとき副産物を発生させますが、それが活性酸素です。

活性酸素は悪玉で、遺伝子のDNAやたんぱく質を酸化して、それらの働きを低下させます。

食餌制限によってこの悪玉活性酸素の量が減少し、寿命延長に貢献していると考えられています。

やはり昔から言われるように腹八分目(いやサルの実験から言うと腹七分目か?)が健康に良いのです。

カロリー制限

このカロリー制限をしてくれる薬があればいいのになあ。

こんなことを考えるひとも多いのではないのでしょうか?

その効果を期待されている薬が実はあるのです。

名前はメトホルミンといいます。

この名前を知っている人もいるのではないでしょうか。

そうです、糖尿病薬で最も多く処方されている薬のひとつです。

米国アルバートアインシュタイン医科大学のバルジライ教授らの大規模研究によると、メトホルミンによる治療を受けている糖尿病患者さんは長生きすることが示されました。

さらにメトホルミンを服用する70歳代の糖尿病患者さんは、糖尿病でない人に比べ死亡率が15%減少したとも報告しています。

その他メトホルミンにがん予防の効果があるという研究も多数報告されています。

メトホルミンは1940年代から使われている薬で、薬価も1錠10円程度と安価なため入手も容易です。

そうなんだ、それでは明日から服用したい!

そう思う人も多いでしょう。

メトホルミンをアンチエイジング薬として健康な人が利用するには、さらなる安全性と効果の確認が必要で、現在調べられているところです。

実用化が待ち遠しいですね。

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