Amazonの検索窓に「1日1食」、「1日2食」と入力してEnterキーを押してみます。
するとおびただしい数の1日1食あるいは1日2食をすすめる本が表示されるでしょう。
そのほとんどが朝食を抜ぬいてダイエットと健康維持を推奨する内容です。
私は長年糖尿病や肥満症などの生活習慣病患者を毎日多数診察している内科医です。
診察時には起床就寝の睡眠時間に始まり、食事の摂取時間、運動にいたるまで詳細に日常生活について聴取しています。
その診察の中から、肥満者(BMI25以上)の3分の2以上、高度肥満(BMI35以上)にいたっては90%以上が朝食を日常的に食べていない事実が浮かび上がって来ます。
令和元年厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、全年代での朝食欠食率は12.1%と報告されています。
朝食欠食と肥満が明らかに関係していると、私は日々の診療から確信しています。
このことを患者さんにお話すると、
「えっ、朝食は食べたほうが良いのですか?抜いたほうがやせるかと思ってました。」
全員からこんな言葉が返ってきます。
この質問に対する回答となるような研究成果が発表されました。
名古屋大学大学院生命農学研究科の小田 裕昭准教授らは、「朝食を食べないと体重が増えるだけではなく筋肉量も低下する」ことを解明して、2022年3月学術雑誌(British Journal of Nutrition)に研究結果を掲載しました。
朝食をとったほうが良いかとらないほうが良いかという「朝食論争」に、終止符が打たれたのではないでしょうか。
朝食と肥満の関係以外にも様々なデータが報告されています。
文部科学省「令和元年度全国学力・学習状況調査」によると、「朝食を毎日食べていますか」という質問に対する回答と学力調査平均正答率との関係は、「食べている」と回答した児童ほど正答率が高くなっているという結果でした。
学力だけでなく体力テストの結果も、朝食摂取頻度ときれいに相関しています。
東北大学加齢医学所長の川島隆太先生も著書「頭の良い子に育てるために3歳から15歳のあいだに今すぐ絶対やるべきこと」の第1に、朝ごはんを食べることを書いています。
加えて同大学加齢医学研究所の研究グループは、朝ごはんを食べないグループは、食べるグループに比べて「午前中のやる気が上がらない」という結果を公表しています。
さらに同研究グループは
「朝ごはんを食べている人のほうが志望する大学に入学している」
「朝ごはんを食べている人のほうが入った大学の偏差値が高い」
「朝ごはんを食べている人のほうが志望する企業に就職している」
「年収が高いグループほど朝ごはんを毎日食べる習慣の人が多い」
という調査結果を公表しました。(東北大学 加齢医学研究所 スマート・エイジング国際共同研究センター プレスリリース2010 年 1 月 12 日)
まさに朝食習慣が人生を変えていますね。
朝食を食べれば直ちに成績が上がるというわけではありませんが、「1日2食で絶好調!」という人を除いて、成績を上げていくためには朝食は欠くことのできない生活習慣なのです。
そして肥満糖尿病などの生活習慣病治療もまったく同じです。
規則正しい3度の食事と睡眠が必須です。
朝食と睡眠をとれば肥満糖尿病がすぐになおるわけではありませんが、多くの患者さんをみてきた経験から言うと、きちんと朝食と睡眠を確保した人がリバウンドなく治療に成功しています。