これは肥満外来で最も多い質問の一つです。
皆さんならどうしますか?
① 水を飲む
② もやしなどカロリーの低いものを食べる
③ アメを舐める
④ 運動する
こんなところでしょうか。
ではその効果をひとつずつ紐解いていきましょう。
空腹とは文字通り胃袋が空っぽになることです。
胃が空になるとホルモンの働きにより、胃や腸が収縮します。
このためぎゅーっとおなかが鳴ることもありますね。
胃の収縮が空腹感につながっていますので、水やもやしなどのカロリーがほとんど含まれず容積が大きいものを胃袋に入れることで空腹感は一時的に癒やされるというわけです。
一方血糖値が低下してくるため、からだは蓄えられた脂肪を分解してエネルギーを作り出そうとします。
この脂肪を分解するときにできるのが、遊離脂肪酸です。
遊離脂肪酸が血液中に増えてくると、この情報が脳の摂食中枢に伝えられ空腹感となって、エネルギーの補給を促します。
ここでアメをなめると、速やかに血糖が上昇するので空腹感から逃れることができます。
アメはゆっくりと一つだけなめることが肝心ですが・・・
さてここからが本題です。
昔からこのようなことが言われていましたが、そのメカニズムが詳らかにされました。
その一つは、運動することによって食欲を強めるホルモンである「グレリン」を減らし、食欲を抑えるホルモンである「ペプチドYY」を増やすことです。
グレリンは胃などから分泌され脳の視床下部に働きかけて食欲を増進させるホルモンで、グレリンを減らすと食欲を抑えられ、食事の量が減少できます。
一方、腸管から分泌されるホルモンのペプチドYYは、視床下部の受容体に作用して食欲を抑え食事の量を減らし、血糖や中性脂肪、体重のコントロールに重要な役割を果たしています。
そしてもう一つのメカニズムが昨年明らかにされました。
「運動により免疫細胞から食欲を抑制する物質が大量に分泌される」(Li VL et al.Nature 606:785-790,2022)
運動によって免疫細胞は乳酸とフェニルアラニンを合体させて乳酸フェニルアラニン(Lac-Phe)を作ります。
このLac-Pheが脳に作用して食欲低下・摂食量低下を引き起こし、抗肥満作用を発揮するのです。
運動させないマウスにLac-Pheを投与すると、高脂肪食を与えても体重減少、体脂肪量減少、代謝亢進が確認されました。
一方マウスの免疫細胞にLac-Pheを作らせないよう実験的に操作を加えると、そのマウスは摂食量が増え体重が増加してしまいました。
Lac-Pheの効果はマウス、ウマ、ヒトなどで確認されています。
実際ひとでも15-30分の運動後に大量のLac-Phe分泌が証明されました。
ダイエット中の皆さんもお腹が空いたらぜひ運動して、空腹感を吹っ飛ばしましょう!
えっ?Lac-Pheの錠剤が欲しい?
そんな要望に答えるべく創薬研究がスタートしていることでしょう。