12時間ダイエット・・・1日の最後の食事から翌日の食事まで12時間以上絶食する
米ソーク生物学研究所のサッチン・パンダ教授は、体内時計の研究で様々な知見を明らかにしました。
12時間ダイエットなどの「時間制限ダイエット」もその一つです。
この食事法は簡単に実行できる上に、体重増加防止や肥満の減量に役立ち、多くの慢性疾患のリスクの減少も期待できます。
十数時間の絶食はなぜダイエットにつながるのか?
動物実験の例からみてみましょう。
ネズミを2つのグループに分けて、同じ高カロリー食(高脂肪食)のエサを与えます。
一方のグループは24時間いつでも食べられるようにしておき、もう一方のグループは活動期の12時間しかエサを食べられないようにセットします。
この状態で数週間飼育するとどうなるでしょうか?
そうすると、2グループとも1日あたりの食事量は同じぐらいになります。
ところが驚くことに、同じエサを同じ量食べているにもかかわらず、12時間制限マウスに比べて24時間ダラダラ食いマウスは「激太り」という結果になりました。
血液検査の結果も24時間摂食マウスは高脂血症や高血糖になっていました。
要約すると、「同じものを同じ量だけ食べても、食べる時間が異なれば体重も変わる」ということです。
つまり、食べたカロリーではなく、「いつ食べたのか」が体重を決める主要因になっているということです。
さらに別の実験を示しましょう。
ネズミを2つのグループに分けて、1つは通常の12時間の昼と夜で飼育します。
もう一方も同様の12時間ずつの昼と夜ですが、週2回照明の切り替え時刻を6時間ずつ前にずらしていきます。
すると、マウスは光の時刻情報に合わせて生活しようとしますので、時差グループは週2回6時間ずつ活動時間帯を前進させます。
するとどうでしょう、この時差状態を数週間続けていくと、マウスは太り始めます。
ちなみに時差のない通常グループに比べて、運動量は変わらず、一方食事量はと言うと驚くべきことに、摂取カロリーは減少していたのです。
さらにこの実験では、時差ボケの環境を2つのグループに分けていました。
片方は24時間いつでも好きなときに食事をたべられる状態に、もう片方は食事のリズムを固定した12時間のみに食べられるように設定しました。
すると面白いことに、この食事時間を固定したグループでは、時差ボケによる肥満が完全におさえられたのです。
まとめると、
・食事時刻を自由にした(食事リズムが乱れた)グループは太った
・食事時刻を固定した(食事リズムが一定)グループは太らなかった
・食事量と運動量は2つのグループで変わらなかった
これらの実験結果を私たちヒトの生活に照らしあわせて考えてみましょう。
病院の看護師さん、介護施設の介護士さん、工場・コンビニ勤務、警察・消防・救急隊の方々・・・その他多数の職種で、昼間に働いている日と夜に働いている日があります。
シフトワーカーのひとは、先ほどのネズミの時差ボケ実験と似たパターンで生活していますが、このような働き方は体重にどのような影響を与えるのでしょうか?
それを調べた多くの研究論文がたくさんあり、結果をまとめて解析したメタアナリシスでは、「シフトワークと体重増加には強い相関関係がある」との結論が記載されています(The effects of shift work on body weight change — a systematic review of longitudinal studies. Alwin van Drongelen et al Scandinavian Journal of Work, Environment & Health 37(4): (2011) 263-275)
私の外来に通院する患者さんは、このようなシフトワーカーの方はもちろん、長時間仕事するひと、家人の塾や仕事の帰りを待つ主婦、パソコン・スマホを使い夜遅くまで寝ないで起きている人など、非常に多くの方々が不規則な生活をおくり食生活もバラバラな状態です。
もちろん、運動量を増やす、食べ過ぎをなくすといった生活習慣も大切です。
しかし実際にはこれらを継続するには、ハードルが高いことも事実です。
その点、「1日の最後の食事から翌日の食事まで12時間以上絶食する」はハードルが低く継続が可能なひとも多いのではないでしょうか?
ぜひ今日から取り入れてみることをおすすめします。
ただし絶食時間以外に、12時間ダイエットを行うにあたって守るべきルールが3つあります。
1.食事は1日3回、朝食、昼食、夕食に分けて食べるーできるだけ均等にして、夜を多くしない
2.炭水化物とたんぱく質を含む朝食を食べる
3.朝食は起床後2時間以内(遅くても8時まで)に食べるーつまり夜8時以降は食べない
仕事でどうしても帰宅が遅くなるひとは分食(「夜遅い時間の食事でなぜ太るのか?」参照)を行ってください。
時間制限ダイエット法で多くの肥満者は減量できるのですが、中には減量できないひとがいます。
なぜでしょうか?
再度ネズミの実験を示しましょう。
マウスを2グループに分け、両方に同じカロリーのエサを与えます。
一方には普通食を、一方には脂肪の割合の多い高脂肪食をあたえます。
その結果、両グループの摂取カロリーに差はないにもかかわらず、高脂肪食グループでは体重が増えたのです。
この実験からわかることは、
「同じカロリーを食べても、食べるものが異なれば体重が変わる」
ということです。
12時間ダイエットでもやせない人は、食べているものが脂質にかたよっていないかふり返ってみましょう。